今回はこちらの問題を解いていきます.
\(x\)が\(0<x<1\)をみたすとき, 以下の不等式が成り立つことを示せ.
(1) \(1+x+x^2<2+x^3\)
(2) \(1+x+x^2+\cdots+x^n<n+x^{n+1}\) (ただし, \(n\)は2以上の整数とする)
ヒント: \(n\)に関する数学的帰納法を用いる.
(2025 香川大学)
今回の問題は結局は\(n\)が2以上の自然数で, \(0<x<1\)のとき, 不等式\(1+x+x^2+\cdots+x^n<n+x^{n+1}\)が成り立つことを示す問題です. 解法のヒントとして数学的帰納法を使うことが明示され, また出発点となる\(n=2\)のときの証明が(1)で誘導されているというとても親切な問題です.
この問題のように\(x\)が入った不等式を証明する際は, 項を左辺か右辺に寄せて\(x\)の関数とみなし, \(x\)の範囲内でその関数が\(0\)以上、\(0\)より大きい, \(0\)以下, \(0\)未満などを示していけば良いです.
では解いていきます.
(1) 証明したい不等式
$$1+x+x^2<2+x^3$$
を変形すると,
$$2+x^3-(1+x+x^2)>0$$
となる. 元の不等式の証明のためには, この左辺を\(f(x)=2+x^3-(1+x+x^2)=x^3-x^2-x+1\)とおき, \(0<x<1\)のとき, \(f(x)>0\)であることを証明すれば良い. \(f(x)\)の増減を調べるために, 微分すると,
$$f^\prime(x)=3x^2-2x-1=(3x+1)(x-1)$$
となり, \(f^\prime(x)=0\)とおくと,
$$x=-\frac{1}{3}, 1$$となる. \(0<x<1\)の範囲で増減表を書くと,
$$
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
x & 0 & \cdots & 1 \\
\hline
f'(x) & – & – & 0 \\
\hline
f(x) & 1 & \searrow & 0 \\
\hline
\end{array}
$$
となり, \(f(x)\)は\(0<x<1\)で単調減少であり, \(f(1)=0\)から\(0<x<1\)の範囲で\(f(x)>0\)であることが言える.
(2) 数学的帰納法で証明する. 出発点となる\(n=2\)は(1)で示している.
\(n=k\)のとき成り立つと仮定する. つまり\(0<x<1\)の範囲で以下の不等式が成り立つとする.
$$
1+x+x^2+\cdots+x^k<k+x^{k+1} \,\,\,\,\text{・・・①}
$$
この前提の下, \(n=k+1\)のときも不等式,
$$
1+x+x^2+\cdots+x^k + x^{k+1}<(k+1)+x^{(k+1)+1}
$$が成り立つことを証明する.
証明したい不等式を変形すると,
$$
(k+1)+x^{k+2}-( 1+x+x^2+\cdots+x^k + x^{k+1})>0
$$
となるので,
$$g(x)=(k+1)+x^{k+2}-( 1+x+x^2+\cdots+x^k + x^{k+1})
$$とおき, \(0<x<1\) のとき, \(g(x)>0\)であることを証明する.
以下のように\(g(x)\)を変形し, ①の不等式を用いると,
$$
\begin{align}
g(x)&=(k+1)+x^{k+2}-x^{k+1}-( 1+x+x^2+\cdots+x^k)\\
&>(k+1)+x^{k+2}-x^{k+1}-(k+x^{k+1})=x^{k+2}-2x^{k+1}+1
\end{align}$$
となるので,
$$h(x)=x^{k+2}-2x^{k+1}+1$$とおき, \(0<x<1\)の範囲で\(h(x)>0\)であることを証明すれば, それは同範囲で\(g(x)>0\)を証明したこととなる.
\(0<x<1\)での\(h(x)\)の増減を調べるため微分すると,
$$
h^\prime(x)=(k+2)x^{k+1}-2(k+1)x^k=(k+2)x^k\left(x-\frac{2(k+1)}{k+2}\right)
$$
となり, \(h^\prime(x)=0\)とおくと, \(x=0\)または, \(x=\frac{2(k+1)}{k+2}\)である. ここで,
$$
\frac{2(k+1)}{k+2}=\frac{(k+2)+k}{k+2}=1+\frac{k}{k+2}>1
$$
であるから, \(0<x<1\)の範囲で\(h(x)\)の増減表を書くと,
$$
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
x & 0 & \cdots & 1 \\
\hline
h'(x) & 0 & – & – \\
\hline
h(x) & 1 & \searrow & 0 \\
\hline
\end{array}
$$
となる. よって, \(h(x)\)は\(0<x<1\)で単調減少であり, \(h(1)=0\)から\(0<x<1\)の範囲で\(h(x)>0\)であることが言える. したがって, \(0<x<1\)の範囲で\(g(x)>0\)であることもわかり, \(n=k+1\)でも与えられた不等式が成り立つことが証明された.
以上から数学的帰納法により, \(n\)が\(2\)以上の自然数のときに,
$$
1+x+x^2+\cdots+x^n<n+x^{n+1}
$$
が成り立つことがわかる.
(1)は基本問題ですね. (2)は\(g(x)\)の増減を調べるために, \(g(x)\)を微分すると\(k+1\)次方程式が出てくるのでつまります. 微分前に帰納法の前提となる不等式で簡単な形の関数にしておくことがミソです.
youtubeでも解説しています.