MENU

【神戸大学入試】ある数列の小数部分が一致しないことの証明(2025)

今回はこちらの問題を解いていきます.

実数\(a\)に対して, \(a\)を超えない最大の整数を\(m\)とするとき, \(a-m\)を\(a\)の小数部分という. 自然数\(n\)に対して\(a_n=\sqrt{n^2+1}\)とし, \(a_n\)の小数部分を\(b_n\)とする. 以下の問いに答えよ.

(1) \(a_n<n+1\)であることを示せ.
(2) \(b_n\)を\(n\)の式で表せ.
(3) 自然数\(n\), \(m\)に対して, \(n\neq m\)ならば, \(b_n\neq b_m\)であることを示せ.
(2025 神戸大学文系[2])

こちら(1), (2)は簡単に終わるのですが, (3)はなかなか難しいです. \(a_n=\sqrt{n^2+1}\)は\(n\)を大きくすると, \(n\)に近づきそうであるという直感から, \(b_n\)が単調減少数列であろうことが予想できます. よってここでは, \(n<m\)のとき, \(b_n>b_m\)であることを示すことがミソになります.

今回は文系の問題ということで, 解答には数Ⅲで学ぶルートの入った関数の微分を用いませんでした. これが使えれば使えれば(3)も簡単に解くことができるため別解でその解法を紹介をします.

それでは解いていきましょう.

(1) 0<\(a_n\)なので,
$$
a_n<n+1 \iff {a_n}^2<(n+1)^2
$$である.
$$
(n+1)^2-{a_n}^2=n^2+2n+1-(n^2+1)=2n>0
$$より,
$$
{a_n}^2<(n+1)^2
$$が示され, 先の同値関係より,
$$
a_n<n+1
$$である.

(2)
$$
n=\sqrt{n^2}<\sqrt{n^2+1}=a_n
$$より, \(a_n>n\)である. これと(1)より\(a_n\)は
$$
n<a_n<n+1
$$を満たしている. \(n\), \(n+1\)は共に自然数であり, この不等式から\(n\)は\(a_n\)を超えておらず, また, \(n+1\)は\(a_n\)を超えていることから, \(a_n\)を超えない最大の自然数は\(n\)である. よって,
$$
b_n=a_n-n=\sqrt{n^2+1}-n
$$である.

(3) \(b_n\)を不等式評価する.
$$
\begin{align}
b_n&=\sqrt{n^2+1}-n=\frac{\left(\sqrt{n^2+1}-n\right)\left(\sqrt{n^2+1}+n\right)}{\sqrt{n^2+1}+n}\\
&=\frac{(n^2+1)-n^2}{\left(\sqrt{n^2+1}+n\right)}=\frac{1}{\left(\sqrt{n^2+1}+n\right)}\\
&=\frac{1}{a_n+n}
\end{align}
$$であり, \(n<a_n<n+1\)であるから,
$$
\begin{align}
n<a_n<n+1 &\iff n+n<a_n+n<(n+1)+n \\
&\iff 2n<a_n+n<2n+1\\
& \iff \frac{1}{2n+1}<\frac{1}{a_n+n}<\frac{1}{2n} \\
&\iff \frac{1}{2n+1}<b_n<\frac{1}{2n}
\end{align}
$$がわかる.

この不等式を用いて, \(n<m\)のとき, \(b_n>b_m\)であることを示す. 先の不等式は\(m\)でも成り立つから,
\begin{align}
\frac{1}{2m+1}<b_m<\frac{1}{2m}
\end{align}
である. よって, \(n<m\)のとき,
$$
\frac{1}{2m}<\frac{1}{2n+1}\,\,・・・①
$$を示せば,
$$
b_m<\frac{1}{2m}<\frac{1}{2n+1}<b_n
$$となり, \(b_n>b_m\)であることがいえる. そして実際, 不等式①は以下のように証明できる. ただし, 以下の証明の中で\(n<m\)で\(n\), \(m\)は共に自然数であることから, \(m-n\geq 1\)を用いている.
$$
\begin{align}
\frac{1}{2n+1}-\frac{1}{2m}&=\frac{2m-(2n+1)}{2m(2n+1)}\\
&=\frac{2(m-n)-1}{2m(2n+1)}\geq \frac{1}{2m(2n+1)}>0
\end{align}
$$ よって, 示すべき不等式が示された.

答えがわかれば簡単に見えますが, \(b_n\)の不等式評価に気づくのはなかなか難しいのではないかと思います. \(n\)が大きくなると, \(\sqrt{n^2+1}\)は\(n\)に近づきそうであるという直感や, \(a_1=\sqrt{2}-1= 0.414\cdots\), \(a_2=\sqrt{5}-2= 0.236\cdots\), \(a_3=\sqrt{10}-3=0.14\cdots\), などの具体的な計算結果から, \(b_n\)が単調減少しそうであるということはすぐに気づいてほしいです. そこに気づけば, なんとか式変形して先の回答に辿り着けるかもしれません.

なお, この数列\(\{a_n\}\)が単調減少しそうであることに気づけば, 数Ⅲを学んだ理系は以下のような別解を思いつくでしょう.

\(x>0\)として, \(f(x)=\sqrt{x^2+1}-x\)とおく. \(x=\sqrt{x^2}<\sqrt{x^2+1}\)であるから,
$$
f^\prime (x)=\frac{x}{\sqrt{x^2+1}}-1=\frac{x-\sqrt{x^2+1}}{\sqrt{x^2+1}}<0
$$となり, \(f(x)\)は\(x>0\)で単調減少である.

ここで, \(b_n=f(n)\)であるから, \(n<m\)のとき, \(b_n=f(n)>f(m)=b_m\)である. よって, \(n\neq m\)のとき, \(b_n\neq b_m\)である.

youtubeでも解説しています.

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次