今回はこちらの問題を解いていきます.
大中小の3個のサイコロを投げて, 大のサイコロの目を\(a\), 中のサイコロの目を\(b\), 小のサイコロの目を\(c\)とする. 3次方程式
$$
(x^2-ax+b)(x-c)=0
$$について, 以下の問いに答えよ.
(1) 3次方程式の実数解の個数が1個である確率を求めよ.
(2) 3次方程式が3個の自然数解を持つ確率を求めよ.
(2025 九州大学理系[5])
確率を求める問題ですが, 本質は, 3次方程式が「1個の実数解を持つ条件」, 「3個の自然数解を持つ条件」を適切に書き下せること, そして, サイコロの目に対して漏れなく, 重複なく場合の数を数え上げることができること, を問う問題となっています. 数え上げは面倒ではあるのですが, しっかり数え上げるだけで確実に点数になるので頑張りましょう.
それでは解いていきましょう.
(1) \((x^2-ax+b)(x-c)=0\)は実数解\(x=c\)を持つので, 実数解の個数が1個になるのは,
① 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が実数解を持たない
② 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が重解\(x=c\)をもつ
のいずれかの場合に限る. またこの①と②は同時に起こらず互いに排反である. よって求める確率は①の確率と②の確率の和となる. 以下でそれぞれの場合において確率を求める.
① 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が実数解を持たないとき
\(a\), \(b\)は実数であるので, この2次方程式が実数解を持たない必要十分条件は, その判別式\(D=a^2-4b\)が負となることである. \(a\), \(b\)について\(D\)が負となる場合の数を数え上げていく.
(①-1) \(a=1\)のとき
\(D=1-4b<0\)より, \(b>\frac{1}{4}\)となり, これを満たす\(b\)は\(1, 2, 3, 4, 5, 6\)の\(6\)通りである.
(①-2) \(a=2\)のとき
\(D=4-4b<0\)より, \(b>1\)となり, これを満たす\(b\)は\(2, 3, 4, 5, 6\)の\(5\)通りである.
(①-3) \(a=3\)のとき
\(D=9-4b<0\)より, \(b>\frac{9}{4}\)となり, これを満たす\(b\)は\(3, 4, 5, 6\)の\(4\)通りである.
(①-4) \(a=4\)のとき
\(D=16-4b<0\)より, \(b>4\)となり, これを満たす\(b\)は\(5, 6\)の\(2\)通りである.
(①-5) \(a=5\)のとき
\(D=25-4b<0\)より, \(b>\frac{25}{4}\)となり, これを満たす\(b\)は存在しない.
(①-6) \(a=6\)のとき
\(D=36-4b<0\)より, \(b>9\)となり, これを満たす\(b\)は存在しない.
以上から, \(D<0\)となる\((a,b)\)の組は, \(6+5+4+2+0+0\)で\(17\)通りとなり, \((a, b)\)の組としての目の出方は全\(36\)通りで, それらは同様に確からしいから, 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が実数解を持たない確率は\(\frac{17}{36}\)となる.
② 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が重解\(x=c\)をもつとき
この2次方程式が重解を持つ必要十分条件は, その判別式\(D=a^2-4b\)が\(0\)になることである. \(a\), \(b\), \(c\)について\(D\)が\(0\)となり, かつ, 与えられた3次方程式が1個の実数解を持つ場合の数を数え上げていく.
(②-1) \(a=1\)のとき
\(D=1-4b=0\)より, \(b=\frac{1}{4}\)となり, これを満たす\(b\)は存在しない.
(①-2) \(a=2\)のとき
\(D=4-4b=0\)より, \(b=1\)となる. このとき2次方程式は\(x^2-2x+1=0\)となり, これは\((x-1)^2=0\)と変形形できることから, \(c=1\)となる. よって, \((a, b, c)=(2, 1, 1)\)となる.
(②-3) \(a=3\)のとき
\(D=9-4b=0\)より, \(b=\frac{9}{4}\)となり, これを満たす\(b\)は存在しない.
(②-4) \(a=4\)のとき
\(D=16-4b=0\)より, \(b=4\)となる. このとき2次方程式は\(x^2-4x+4=0\)となり, これは\((x-2)^2=0\)と変形形できることから, \(c=2\)となる. よって, \((a, b, c)=(4, 4, 2)\)となる.
(②-5) \(a=5\)のとき
\(D=25-4b=0\)より, \(b=\frac{25}{4}\)となり, これを満たす\(b\)は存在しない.
(②-6) \(a=6\)のとき
\(D=36-4b=0\)より, \(b=9\)となり, これを満たす\(b\)は存在しない.
以上から, ②が実現する\((a, b, c)\)の組は, \((2, 1, 1), (4, 4, 2)\)の2通りである. \((a, b, c)\)の組としての目の出方は全\(216(=6^3)\)通りで, これらは同様に確からしいから, 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が重解\(x=c\)をもつ確率は, \(\frac{2}{216}=\frac{1}{108}\)である.
よって, ①, ②より, 3次方程式の実数解の個数が1個である確率は
$$
\frac{17}{36}+\frac{1}{108}=\frac{52}{108}=\frac{13}{27}
$$
である.
(2) 3次方程式\((x^2-ax+b)(x-c)=0\)は自然数解\(x=c\)を持つ. よってこの方程式が自然数解を3個持つのは, 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が\(x=c\)とは異なる自然数解を2個持つときである.
2次方程式\(x^2-ax+b=0\)の解は, 解の公式から,
$$
x=\frac{a\pm\sqrt{a^2-4b}}{2}
$$
と表せるので, この2つの解が自然数解となる必要条件は\(a^2-4b\)が平方数になることである. ここで\(a^2-4b=0\)のとき, 2次方程式は重解を持つが, 今は自然数解を2個もつ場合を考えているから, 平方数から\(0\)を除く. また\(a^2\)の最大値は\(36\)であるから, \(a^2-4b\)が36以上の平方数になることはない. 以上から, \(a^2-4b\)がとる可能性の残っている平方数である\(1, 4, 9, 16, 25\)ごとに場合分けして, \(a, b\)について, 2次方程式\(x^2-ax+b=0\)が自然数解を2個持つ場合の数を数え上げていく.
① \(a^2-4b=1\)のとき
\(a^2=4b+1\)より\(b\)の値ごとに\(4b+1\)が平方数になる場合を数え上げる.
\(b=1\)は\(4b+1=5\)となり不適.
\(b=2\)は\(4b+1=9=3^2\)となり\(a=3\)がわかる. このとき2次方程式は\(x^2-3x+2=(x-2)(x-1)=0\)となり, \(x=1, 2\)が解となる. よって\((a, b)=(3, 2)\)のとき, 2次方程式は2個の自然数解を持つ.
\(b=3\)は\(4b+1=13\)となり不適.
\(b=4\)は\(4b+1=17\)となり不適.
\(b=5\)は\(4b+1=21\)となり不適.
\(b=6\)は\(4b+1=25=5^2\)となり\(a=5\)がわかる. このとき2次方程式は\(x^2-5x+6=(x-2)(x-3)=0\)となり, \(x=2, 3\)が解となる. よって\((a, b)=(5, 6)\)のとき, 2次方程式は2個の自然数解を持つ.
② \(a^2-4b=2^2=4\)のとき
\(a^2=4b+4\)より\(b\)の値ごとに\(4b+4\)が平方数になる場合を数え上げる.
\(b=1\)は\(4b+4=8\)となり不適.
\(b=2\)は\(4b+4=12\)となり不適.
\(b=3\)は\(4b+4=16=4^2\)となり\(a=4\)がわかる. このとき2次方程式は\(x^2-4x+3=(x-3)(x-1)=0\)となり, \(x=1, 3\)が解となる. よって\((a, b)=(4, 3)\)のとき, 2次方程式は2個の自然数解を持つ.
\(b=4\)は\(4b+4=20\)となり不適.
\(b=5\)は\(4b+4=24\)となり不適.
\(b=6\)は\(4b+4=28\)となり不適.
③ \(a^2-4b=3^2=9\)のとき
\(a^2=4b+9\)より\(b\)の値ごとに\(4b+9\)が平方数になる場合を数え上げる.
\(b=1\)は\(4b+9=13\)となり不適.
\(b=2\)は\(4b+9=17\)となり不適.
\(b=3\)は\(4b+9=21\)となり不適.
\(b=4\)は\(4b+9=25=5^2\)となり\(a=5\)がわかる. このとき2次方程式は\(x^2-5x+4=(x-4)(x-1)=0\)となり, \(x=1, 4\)が解となる. よって\((a, b)=(5, 4)\)のとき, 2次方程式は2個の自然数解を持つ.
\(b=5\)は\(4b+9=29\)となり不適.
\(b=6\)は\(4b+9=33\)となり不適.
④ \(a^2-4b=4^2=16\)のとき
\(a^2=4b+16\)より\(b\)の値ごとに\(4b+16\)が平方数になる場合を数え上げる.
\(b=1\)は\(4b+16=20\)となり不適.
\(b=2\)は\(4b+16=24\)となり不適.
\(b=3\)は\(4b+16=28\)となり不適.
\(b=4\)は\(4b+16=32\)となり不適.
\(b=5\)は\(4b+16=36=6^2\)となり\(a=6\)がわかる. このとき2次方程式は\(x^2-6x+5=(x-5)(x-1)=0\)となり, \(x=1, 5\)が解となる. よって\((a, b)=(6, 5)\)のとき, 2次方程式は2個の自然数解を持つ.
\(b=6\)は\(4b+16=40\)となり不適.
⑤ \(a^2-4b=5^2=25\)のとき
\(a^2=4b+25\)より\(b\)の値ごとに\(4b+25\)が平方数になる場合を数え上げる.
\(b=1\)は\(4b+25=29\)となり不適.
\(b=2\)は\(4b+25=33\)となり不適.
\(b=3\)は\(4b+25=37\)となり不適.
\(b=4\)は\(4b+25=41\)となり不適.
\(b=5\)は\(4b+25=45\)となり不適.
\(b=6\)は\(4b+25=49=7^2\)となるが, \(a\)は\(6\)以下であるので不適.
①〜⑤より, 2次方程式が2個の自然数解をもつ\((a, b)\)の組は, \((a, b)=(3, 2), (5, 6), (4, 3), (5, 4), (6, 5)\)の5通りである. そして, その自然数解はいずれも\(1\)以上\(6\)以下の自然数であったから, その各々について\(c\)がとり得る値は2次方程式の2個の自然数解を除く\(4\)通りである. よって, 与えられた3次方程式が3個の自然数解を持つときの, \((a, b, c)\)の組としての場合の数は, \(5\times 4=20\)通りである.
\((a, b, c)\)の組としての目の出方は全\(216(=6^3)\)通りで, これらは同様に確からしいから求める確率は,
$$
\frac{20}{216}=\frac{5}{54}
$$
となる.
上の解答はPCで書いているということからコピー, ペースト機能が使えるため愚直に全ての場合を列挙したが, 実際の試験会場では,
\(a^2=4b+16\)を満たす\((a, b)\)の組は, \((6, 5)\)のみである.
のように, 省略して書いても問題ないと思われます. もっと言えば,
$$
x=\frac{a\pm\sqrt{a^2-4b}}{2}
$$
が自然数解となるのは, \((a, b)=(3, 2), (5, 6), (4, 3), (5, 4), (6, 5)\)の5通りであり, その自然数解はそれぞれ,
\(x=1,2\)
\(x=2,3\)
\(x=1,3\)
\(x=1,4\)
\(x=1,5\)
となる. これらはいずれも\(1\)以上\(6\)以下なので,(続く)
のように1つ上の階層から省略しても良いと思われます.
youtubeでも解説しています.