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【一橋大学入試】正の約数の個数に関係する最大値問題(2025)

今回はこちらの問題を解いていきます.

自然数\(n\)に対し, \(n\)の正の約数の個数を\(d(n)\)とし,
$$
f(n)=\frac{d(n)}{\sqrt{n}}
$$
とおく. 以下の問いに答えよ.
(1) \(f(2025)\)の値を求めよ.
(2) 素数\(p\)と正の整数\(k\)の組で\(f(p^k)\leq f(p^{k+1})\)を満たすものを全て求めよ.
(3) \(f(n)\)の最大値と, そのときの\(n\)の値を求めよ.
(2025 一橋大学)

この問題に出てくる\(d(n)\)は大学数学の世界では乗法的関数の一例として学びます. 乗法的関数とは正の整数を定義域とする関数で, \(a\), \(b\)が互いに素であるとき, \(f(ab)=f(a)f(b)\)が成り立つ関数のことです. この性質があるため, 自然数\(n\)を,
$$
n={p_1}^{k_1}{p_2}^{k_2}\cdots{p_r}^{k_r}
$$
のように相異なる素数\(p_1, p_2, \cdots, p_r\)の積の形で素因数分解したとき,
$$
d(n)=d({p_1}^{k_1})\cdot d({p_2}^{k_2})\cdots d({p_r}^{k_r})
$$
のように素数ごとに分解して計算することができます. 実は\(f(n)\)も乗法的関数になり,
$$
f(n)=f({p_1}^{k_1})\cdot f({p_2}^{k_2})\cdots f({p_r}^{k_r})
$$
が成り立ちます. ここに気づくことがこの問題を解くミソです.

それでは解いていきましょう.

(1) \(2025\)は\(3^4\cdot 5^2\)と素因数分解ができ, その任意の正の約数は\(3^a\cdot 5^b\)の形で表すことができる. ここで, \(a\), \(b\)はそれぞれ, \(0\)以上\(4\)以下, \(0\)以上\(2\)以下の整数である. 素因数分解の一意性より, \(a\), \(b\)がそれぞれ一致しない限り別の正の約数になることがわかる. よって\(2025\)の正の約数の個数は, \(a\)の選び方が\(5\)通り, また, 各\(a\)の値に対して\(b\)の選び方が\(3\)通りあるので, \(3\times 5\)の\(15\)個である. よって, \(d(2025)=15\)となり,
$$
f(2025)=\frac{d(2025)}{\sqrt{2025}}=\frac{15}{45}=\frac{1}{3}
$$
となる.

(2) \(d(p^k)=k+1\)に注意して, 与えられた不等式を同値変形していく.
$$
\begin{align}
f(p^k)\leq f(p^{k+1}) &\iff \frac{d(p^k)}{\sqrt{p^k}}\leq \frac{d(p^{k+1})}{\sqrt{p^{k+1}}}\\
&\iff \frac{k+1}{\sqrt{p^k}}\leq \frac{k+2}{\sqrt{p^{k+1}}}\\
&\iff (k+1)\sqrt{p^{k+1}}\leq (k+2)\sqrt{p^{k}}\\
&\iff (k+1)\sqrt{p}\leq k+2\\
&\iff \sqrt{p}\leq \frac{k+2}{k+1}\\
\end{align}
$$
この不等式を満たす, \(p\), \(k\)を求めれば良い. ここで, \(k\)が\(1\)以上の整数であることから,
$$
\frac{k+2}{k+1}=\frac{(k+1)+1}{k+1}=1+\frac{1}{k+1}\leq 1+\frac{1}{2}=\frac{3}{2}
$$
であるから,
$$
\sqrt{p}\leq \frac{3}{2}
$$
である. 両辺正であるから二乗して,
$$
p\leq \frac{9}{4}
$$
を得るが, \(p\)が素数であることから, \(p=2\)だけが\(p\)の候補となる. 次に\(p=2\)のとき,
$$
\sqrt{2}\leq\frac{k+2}{k+1} \iff \sqrt{2}(k+1)\leq k+2 \iff k\leq\frac{2-\sqrt{2}}{\sqrt{2}-1}=
\sqrt{2}
$$
であるから, これを満たす正の整数\(k\)は\(1\)に限られる.

よって, \(f(p^k)\leq f(p^{k+1})\)を満たす\(p\), \(k\)の組は, \((p,k)=(2,1)\)であり, これ以外には存在しない.

(3) 自然数\(n\)を
$$
n={p_1}^{k_1}{p_2}^{k_2}\cdots{p_r}^{k_r}
$$
のように相異なる素数\(p_1, p_2, \cdots, p_r\)の積の形で素因数分解をする. ここで\(k_1, k_2, \cdots, k_r\)は正の整数である. このとき, \(n\)の任意の正の約数は, \({p_1}^{a_1}{p_2}^{a_2}\cdots{p_r}^{a_r}\)の形をしており, 素因数分解の一意性と, \(i=1,2,\cdots, r\)に対して\(a_i\)は\(0\)以上\(k_i\)以下の整数値をとることから, \(n\)の正の約数の個数は\((k_1+1)(k_2+1)\cdots(k_r+1)\)であることがわかる. これから,
$$
\begin{align}
f(n)&=\frac{d({p_1}^{k_1}{p_2}^{k_2}\cdots{p_r}^{k_r})}{\sqrt{{p_1}^{k_1}{p_2}^{k_2}\cdots{p_r}^{k_r}}}\\
&=\frac{(k_1+1)(k_2+1)\cdots(k_r+1)}{\sqrt{{p_1}^{k_1}}\sqrt{{p_2}^{k_2}}\cdots\sqrt{{p_r}^{k_r}}}\\
&=\frac{(k_1+1)}{\sqrt{{p_1}^{k_1}}}\cdot\frac{(k_2+1)}{\sqrt{{p_2}^{k_2}}}\cdots\frac{(k_r+1)}{\sqrt{{p_r}^{k_r}}}\\
&=f({p_1}^{k_1})f({p_2}^{k_2})\cdots({p_r}^{k_r})
\end{align}
$$
となることがわかるので, 素数\(p\)と\(0\)以上の整数\(k\)に対して, \(f(p^k)=\frac{k+1}{\sqrt{p^k}}\)の最大値を調べる.

まず, \(k=0\)のとき, \(p\)の値によらず, \(f(p^0)=f(1)=1\)であることはすぐにわかる. よって, \(k\geq 1\)として, 各素数\(p\)について確認する.

① \(p=2\)のとき
$$
\begin{align}
f(2^1)&=f(2)=\frac{d(2)}{\sqrt{2}}=\sqrt{2}\\
f(2^2)&=f(2^2)=\frac{d(2^2)}{\sqrt{2^2}}=\frac{3}{2}
\end{align}
$$
となり, \(f(2^0)<f(2^1)<f(2^2)\)となっている. ここで(2)より,
$$
f(2^2)>f(2^3)>f(2^4)>\cdots
$$
がわかるので, \(f(2^k)\)は\(k=2\)のとき最大値\(\frac{3}{2}\)をとる.

② \(p=3\)のとき
$$
f(3^1)=f(3)=\frac{d(3)}{\sqrt{3}}=\frac{2}{\sqrt{3}}
$$
となり, \(f(3^0)<f(3^1)\)となっている. ここで(2)より,
$$
f(3^1)>f(3^2)>f(3^3)>\cdots
$$
がわかるので, \(f(3^k)\)は\(k=1\)のとき最大値\(\frac{2}{\sqrt{3}}\)をとる.

③ \(p\)が\(5\)以上の素数のとき
$$
f(p^1)=\frac{d(p)}{\sqrt{p}}=\frac{1}{\sqrt{p}}\leq\frac{1}{5}<1=f(p^0)
$$
であり, (2)より,
$$
f(p^1)>f(p^2)>f(p^3)>\cdots
$$
がわかるので, \(f(p^k)\)は\(k=0\)のとき最大値\(1\)をとる.

以上を踏まえて\(f(n)\)の最大値を求める. \(n=2^{k_1}3^{k_2}{p_3}^{k_3}{p_4}^{k_4}\cdots{p_r}^{k_r}\)と素因数分解をする. ここで\(k_1, k_2, \cdots, k_r\)は\(0\)以上の整数で, \(p_3, p_4, \cdots, p_r\)はいずれも3より大きい相異なる素数とする. このとき, 先に得た各素数\(p\)に対する \(f(p^k)\)の最大値の議論から,
$$
\begin{align}
f(n)&=f(2^{k_1})f(3^{k_2})f({p_3}^{k_3})f({p_4}^{k_4})\cdots f({p_r}^{k_r})\\
&\leq \frac{3}{2}\cdot\frac{2}{\sqrt{3}}\cdot 1 \cdot 1 \cdots 1=\sqrt{3}
\end{align}
$$
がわかり, これから, \(n=2^2\cdot 3^1=12\)のとき,\(f(n)\)は最大値\(\sqrt{3}\)をとることがわかる.

こちらは議論も難しく, なかなかの難問ではないかと思います. 私は大学で乗法的関数の存在を知っていたので, \(f(n)\)を素数ごとに分解して考える発想ができましたが, それを知らないとなかなか難しいのはないかと思います. (2)が多少ヒントになっているので, そちらで気づかないといけないのかも知れません.

youtubeでも解説しています.

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