今回はこちらの問題を解いていきます.
整数の組\((a,b)\)に対して\(2\)次式\(f(x)=x^2+ax+b\)を考える. 方程式\(f(x)=0\)の複素数の範囲のすべての解\(\alpha\)に対して, \(\alpha^n=1\)となる正の整数\(n\)が存在するような組\((a,b)\)をすべて求めよ.
(2024 東京工業大学 [5])
それでは解いていきましょう.
\(f(x)=0\)の\(1\)つの解を\(x=\alpha\)とし, この\(\alpha\)に対して, 正の整数\(n\)が存在して\(\alpha^n=1\)を満たすとする. このとき, $$
|\alpha|^n=|\alpha^n|=|1|=1
$$であり, \(|\alpha|\)は\(0\)以上の実数であるから, \(|\alpha|=1\)となる. これから, \(f(x)=0\)のすべての解は複素平面上で\(0\)を中心とする半径\(1\)の円周上にあることがわかる.
また, \(f(x)=0\)は\(2\)次方程式であるから重複度を込めて解は\(2\)つあり, 係数が実数であることから\(f(x)=0\)が虚数解\(\alpha\)をもつとき, その共役\(\overline{\alpha}(\neq \alpha)\)が他方の解となる. これから, \(f(x)=0\)は「重複度を込めて\(2\)つの実数解をもつ」, 「\(2\)つの虚数解をもつ」のいずれか一方が成り立つ.
① \(f(x)=0\)が重複度を込めて\(2\)つの実数解をもつとき
\(f(x)=0\)の解の絶対値は\(1\)であるから, 実数解は\(-1\), \(1\)に限られる. これから, \(f(x)\)として,$$
\begin{align}
f(x)&=(x+1)^2=x^2+2x+1\\[1.5ex]
f(x)&=(x+1)(x-1)=x^2-1\\[1.5ex]
f(x)&=(x-1)^2=x^2-2x+1
\end{align}
$$の3通りが考えられ, 対応する\((a,b)\)の組は,$$
(a,b)=(2,1), (0,-1), (-2,1)
$$となる.
② \(f(x)=0\)が\(2\)つの虚数解をもつとき
\(f(x)=0\)の解の\(1\)つを\(\alpha\)とし, 実数\(p\), \(q\)を用いて, \(\alpha=p+qi\)で表す. 先の注意から, \(\overline{\alpha}=p-qi\)も解であるから, 解と係数の関係から,$$
\begin{align}
\alpha+\overline{\alpha}&=-a\\[1.5ex]
\alpha\overline{\alpha}&=b
\end{align}
$$である. \(\alpha+\overline{\alpha}=2p\), \(\alpha\overline{\alpha}=|\alpha|^2=1\)であることに注意して,$$
\begin{align}
a&=-2p\\[1.5ex]
b&=1
\end{align}
$$がわかる.
ここで, \(\alpha\)は複素平面上で\(0\)を中心とする半径\(1\)の円周上にあり, \(\alpha\neq \pm 1\)であるから, \(-1<p<1\)である. この不等式の辺々を\(-2\)倍して, \(-2p=a\)より, \(-2<a<2\)であることがわかる. \(a\)は整数であることから, \(a\)は\(-1\), \(0\), \(1\)のいずれである必要がある.
②-1) \(a=-1\)のとき
\(f(x)=x^2-x+1\)となり, \(f(x)=0\)の解は,$$
x=\frac{1\pm\sqrt{1-4}}{2}=\frac{1}{2}\pm\frac{\sqrt{3}}{2}i
$$であり, $$
\begin{align}
\left(\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^6&=\left(\cos{\frac{\pi}{3}}+i\sin{\frac{\pi}{3}}\right)^6\\[1.5ex]
&=\cos{2\pi}+i\sin{2\pi}=1\\[1.5ex]
\left(\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^6&=\left(\cos{\left(-\frac{\pi}{3}\right)}+i\sin{\left(-\frac{\pi}{3}\right)}\right)^6\\[1.5ex]
&=\cos{(-2\pi)}+i\sin{(-2\pi)}=1
\end{align}
$$となるので, \((a,b)=(-1,1)\)は条件を満たす.
②-2) \(a=0\)のとき
\(f(x)=x^2+1\)となり, \(f(x)=0\)の解は,$$
x=\pm i
$$であり, $$
\begin{align}
i^4=1\\[1.5ex]
(-i)^4=1
\end{align}
$$となるので, \((a,b)=(0,1)\)は条件を満たす.
②-3) \(a=1\)のとき
\(f(x)=x^2+x+1\)となり, \(f(x)=0\)の解は,$$
x=\frac{-1\pm\sqrt{1-4}}{2}=-\frac{1}{2}\pm\frac{\sqrt{3}}{2}i
$$であり, $$
\begin{align}
\left(-\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^3&=\left(\cos{\frac{2\pi}{3}}+i\sin{\frac{2\pi}{3}}\right)^3\\[1.5ex]
&=\cos{2\pi}+i\sin{2\pi}=1\\[1.5ex]
\left(-\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^3&=\left(\cos{\left(-\frac{2\pi}{3}\right)}+i\sin{\left(-\frac{2\pi}{3}\right)}\right)^3\\[1.5ex]
&=\cos{(-2\pi)}+i\sin{(-2\pi)}=1
\end{align}
$$となるので, \((a,b)=(1,1)\)は条件を満たす.
①, ②より, 条件を満たす\((a,b)\)は$$
(a,b)=(2,1), (0,-1), (-2,1), (-1,1), (0,1), (1,1)
$$の\(6\)通りである.
youtubeでも解説しています.