今回はこちらの問題を解いていきます.
(1) 自然数\(a\), \(b\)が\(a<b\)を満たすとき, \(\displaystyle \frac{b!}{a!}\geq b\)を示せ.
(2) \(2\cdot a!=b!\) となる自然数の組\((a, b)\)をすべて求めよ.
(3) \(a!+b!=2\cdot c!\) となる自然数の組\((a,b,c)\)をすべて求めよ.
(2024 九州大学 [3])
それでは解いていきましょう.
(1) \(a\), \(b\)は自然数より, \(a<b\)から\(a\leq b-1\)となる. これから, \(a!\leq (b-1)!\)がわかり, 両辺に\(b(>0)\)をかけたあとに\(a!(>0)\)で割ると, $$
\begin{align}
& b\cdot a!\leq b\cdot (b-1)!\\[1.5ex]
\iff & b\cdot a!\leq b!\\[1.5ex]
\iff & b\leq \frac{b!}{a!}\\[1.5ex]
\end{align}
$$がわかる.
(2) まず, \(a<b\)であることを示す. \(a\geq b\)とすると, \(a!\geq b!\)より,$$
\begin{align}
b!=2\cdot a! \geq 2\cdot b!
\end{align}
$$となり, 両辺を\(b!(>0)\)で割ると,$$
1\geq 2
$$となりこれは矛盾である. よって, \(a<b\)となることがわかる.
自然数\(a\), \(b\)に対して\(a<b\)が成り立つから, (1)より, \(\displaystyle \frac{b!}{a!}\geq b\)であるから,$$
\begin{align}
&2\cdot a!=b!\\[1.5ex]
\Longrightarrow & 2=\frac{b!}{a!}\geq b
\end{align}
$$となり, \(b\)が自然数であることから\(b=1\), または, \(b=2\)となる必要がある.
\(b=1\)のとき, \(a<b=1\)を満たす自然数\(a\)は存在しない.
\(b=2\)のとき, \(a<b=2\)を満たす自然数\(a\)は\(a=1\)のみであり, \((a,b)=(1,2)\)は\(2\cdot a!=b!\)を満たす.
よって, \(2\cdot a!=b!\)を満たす自然数の組\((a,b)\)は\((a,b)=(1,2)\)であり, これに限る.
(3) \(a!+b!=2\cdot c!\)は\(a\), \(b\)に関して対称だから, \(a \geq b\)としてよい. ①\(a=b\), ②\(a>b\)で場合わけして, 条件式を満たす\((a,b,c)\)の組を求める.
① \(a=b\)のとき
\(b!=a!\)より, $$
\begin{align}
& 2\cdot c!=a!+b!=2\cdot a!\\[1.5ex]
\iff & c!=a!
\end{align}
$$となり, \(a\), \(c\)が自然数であることから, \(a=c\)がわかる.
よって, \(a=b=c\)となることがわかる. 逆に任意の自然数\(n\)に対して, \(a=b=c=n\)とすると, \(a!+b!=2\cdot c!\)が成り立つ.
② \(a>b\)のとき
\(a>b\)のとき, \(a!>b!\)であること, また, \(b\), \(c\)が自然数であることに注意して,$$
\begin{align}
& 2\cdot c!=a!+b!>2\cdot b!\\[1.5ex]
\iff & c!>b!\\[1.5ex]
\iff & c>b\\[1.5ex]
\end{align}
$$となる. これから, \(b\)は\(a\), \(c\)いずれよりも小さいことがわかるので, 自然数\(n\), \(m\)を用いて,$$
\begin{align}
a&=b+n\\[1.5ex]
c&=b+m
\end{align}
$$であることがわかる.
これを条件式に代入して,$$
(b+n)!+b!=2\cdot (b+m)!
$$となるが, $$
\begin{align}
(b+n)!&=(b+n)(b+n-1)\cdots (b+1)b!\\[1.5ex]
(b+m)!&=(b+m)(b+m-1)\cdots (b+1)b!
\end{align}
$$となるから, $$
(b+n)(b+n-1)\cdots (b+1)b! + b!=(b+m)(b+m-1)\cdots (b+1)b!
$$がなりたつ. 両辺を\(b!\)で割って, $$
(b+n)(b+n-1)\cdots (b+1) + 1=2(b+m)(b+m-1)\cdots (b+1)
$$となる. ここで, \(n\geq 2\)とすると, 左辺は連続する\(2\)つ以上の自然数の積に\(1\)を足したものであり, 奇数となる. 一方で右辺は偶数であることから, これらは矛盾する. よって, \(n=1\)となる必要がある.
\(n=1\)のとき, $$
(b+1)+1=2(b+m)(b+m-1)\cdots (b+2)(b+1)
$$となるが, \(m\geq 2\)とすると, 両辺を\(b+2\)で割ることで,$$
1=2\times (自然数)
$$となり, これは矛盾である. よって\(m=1\)となる必要があるが, このとき, 条件式は$$
b+2=2(b+1)
$$となり, \(b=0\)が導かれるが, これは\(b\)が自然数であることに反する. よって, \(a>b\)のときに, 条件式を満たす自然数の組\((a,b,c)\)は存在しない.
①, ②から条件式を満たす, 自然数\((a,b,c)\)の組は, 任意の自然数\(n\)に対して, \((n,n,n)\)である.
youtubeでも解説しています.