今回はこちらの問題を解いていきます.
A, B, Cの3人が, A, B, C, A, B, C, A, ・・・の順にサイコロを投げ, 最初に1の目を出した人が勝ちとなるゲームがあり, だれかが1を出すか, もしくは, 全員が\(n\)回ずつ投げたら
ゲームを終了する. A, B, Cが勝つ確率をそれぞれ求めよ.
(2023 一橋大学 [5])
こちらは, 変数\(n\)が絡む確率を求めるということで, 一見難しそうに見えますが, 本質的には, コイントスで\(k\)回目に初めて表が出る確率, を求めるような問題と同じです. Aが勝つという事象を排反な事象の和事象の形で表して確率を計算していきます.
それでは解いていきましょう.
\(A\)を「Aが勝つ」事象とし, \(A_k\) \((k=1,2,\cdots, n)\)を「Aが\(k\)回目のサイコロ投げで勝つ」事象とする. \(B\), \(B_k\), \(C\), \(C_k\)についても同様に定義する.
このとき, $$
A=A_1 \cup A_2 \cup \cdots \cup A_n
$$であり, 各\(A_k\)は互いに排反である. よって, Aが勝つ確率\(P(A)\)は, $$
P(A)=\sum_{k=1}^nP(A_k)
$$となる.
ここで, 事象\(A_k\)が起こるのは, Aが\(k\)回目のサイコロを投げるまでに, A, B, Cの3人が投げた合計\(3(k-1)\)回全て1以外の目が出て, その後Aが\(k\)回目のサイコロ投げで1を出す確率なので,
$$
P(A_k)=\left(\frac{5}{6}\right)^{3(k-1)}\cdot\frac{1}{6}
$$となる. よって, $$
\begin{align}
P(A)&=\sum_{k=1}^nP(A_k)\\[1.5ex]
&=\sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^{3(k-1)}\cdot\frac{1}{6}\right\}\\[1.5ex]
&=\frac{1}{6}\sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^3\right\}^{k-1}\\[1.5ex]
&=\frac{1}{6}\cdot\frac{1-\left(\frac{5}{6}\right)^{3n}}{1-\left(\frac{5}{6}\right)^3}\\[1.5ex]
&=\frac{36}{91}\left\{1-\left(\frac{5}{6}\right)^{3n}\right\}
\end{align}
$$と求まる. ここで, \(\displaystyle \sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^3\right\}^{k-1}\)は, 初項\(1\), 公比\(\displaystyle \left(\frac{5}{6}\right)^3\), 項数\(n\)として, 等比数列の和の公式を使って求めた. \(B\)も同様に,
$$
P(B)=\sum_{k=1}^nP(B_k)
$$となり, 事象\(B_k\)が起こるのは, Bが\(k\)回目のサイコロを投げるまでに, A, B, Cの3人が投げた合計\(3k-2\)回全て1以外の目が出て, その後Bが\(k\)回目のサイコロ投げで1を出す確率なので,
$$
P(B_k)=\left(\frac{5}{6}\right)^{3k-2}\cdot\frac{1}{6}
$$となる. よって, $$
\begin{align}
P(B)&=\sum_{k=1}^nP(B_k)\\[1.5ex]
&=\sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^{3k-2}\cdot\frac{1}{6}\right\}\\[1.5ex]
&=\frac{5}{6}\sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^{3(k-1)}\cdot\frac{1}{6}\right\}\\[1.5ex]
&=\frac{5}{6}\times P(A)\\[1.5ex]
&=\frac{30}{91}\left\{1-\left(\frac{5}{6}\right)^{3n}\right\}
\end{align}
$$となる. 最後に, \(P(C)\)も同様に求める. 事象\(C_k\)が起こるのは, Cが\(k\)回目のサイコロを投げるまでに, A, B, Cの3人が投げた合計\(3k-1\)回全て1以外の目が出て, その後Cが\(k\)回目のサイコロ投げで1を出す確率なので,$$
P(C_k)=\left(\frac{5}{6}\right)^{3k-1}\cdot\frac{1}{6}
$$であり,
$$
\begin{align}
P(C)&=\sum_{k=1}^nP(C_k)\\[1.5ex]
&=\sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^{3k-1}\cdot\frac{1}{6}\right\}\\[1.5ex]
&=\left(\frac{5}{6}\right)^2\sum_{k=1}^n\left\{\left(\frac{5}{6}\right)^{3(k-1)}\cdot\frac{1}{6}\right\}\\[1.5ex]
&=\left(\frac{5}{6}\right)^2\times P(A)\\[1.5ex]
&=\frac{25}{91}\left\{1-\left(\frac{5}{6}\right)^{3n}\right\}
\end{align}
$$と求まる.
いくつか補足をします. まず,
$$
P(A)>\frac{5}{6}P(A)=P(B)>\left(\frac{5}{6}\right)^2P(A)=P(C)
$$から, ゲームに勝つ確率はAが最も大きく, Cが最も小さいことがわかります. これは直感通りで, 先に投げることができるAが, 一番勝つ確率が大きいはずです. Aが1回目のサイコロ投げで1の目を出すと, B, Cはサイコロを1度も投げることなく, ゲームは終了してしまいます. Cが勝つ確率が一番小さいのもの直感通りです.
次にこのゲームは誰も勝たない(=引き分け)の状態でゲームが終了することがあり得ます. それはA, B, Cが各\(n\)回一度も1の目を出せないときで, その確率は,$$
P(引き分け)=\left(\frac{5}{6}\right)^{3n}
$$となります. ゲーム終了時点で, 「Aが勝つ」, 「Bが勝つ」, 「Cが勝つ」, 「引き分け」のいずれか1つが必ず起き, そしてどの2つも同時に起こり得ないため,$$
P(A)+P(B)+P(C)+P(引き分け)=1
$$となるはずですし, 今回求めた各確率を入れると実際に成り立つことがわかります.
求めた確率が誤っていた場合, 上記のように「直感に反していないか」、「全ての場合の確率を足して\(1\)になるか」を確認することで, 計算間違いに気づくことができるかもしれません.
また, 理系の範囲(数Ⅲ)の補足になりますが, 今回のルールを改変して, 「\(n\)回ずつ投げ終わったら引き分け」というルールを外し, 「決着がつくまでサイコロを投げ続ける」としてみましょう. このとき, A, B, Cが勝つ確率は, それぞれ上で求めた\(P(A)\), \(P(B)\), \(P(C)\)で\(n\rightarrow \infty\)としたものになります. $$ \lim_{n\rightarrow \infty} \left(\frac{5}{6}\right)^{3n}=0$$より, その確率はそれぞれ, \(\displaystyle \frac{36}{91}\), \(\displaystyle \frac{30}{91}\), \(\displaystyle \frac{25}{91}\)となり, このルールの場合は引き分けがないため, これら3つの確率の和は\(1\)になることがわかります. このように, \(n\)などのパラメータが入った確率でそのパラメータを無限大にして, その確率の意味を考えるのも面白いです.
youtubeでも解説しています.