今回はこちらの問題を解いていきます.
整数\(a\), \(b\), \(c\)は \(2\leq a<b<c\leq 6\) を満たすとする. 以下の問いに答えよ.
(1) \(a+b>c\) を満たす\(a\), \(b\), \(c\) の組\((a, b, c)\) を全て求めよ.
(2) \(a^2+b^2\geq c^2\) を満たす\(a\), \(b\), \(c\)の組\((a, b, c)\) を全て求めよ.
(3) (2)で求めた各\((a, b, c)\) について, 頂点\(\mathrm{A}\), \(\mathrm{B} \), \(\mathrm{C}\)に向かい合う辺の長さが\(a\), \(b\), \(c\) となる三角形\(\mathrm{ABC}\)を考える. このとき, \(\cos{ \angle{\mathrm{ACB}} }\) を求めよ.
(2025 北海道大学 [2])
こちら, (3)を除いて単なる整数問題に見えますが, 実は(1)では辺の長さが\(a\), \(b\), \(c\) となる三角形が成立する条件を考えており, (2)ではその三角形が直角三角形, もしくは鋭角三角形になる条件(=鈍角三角形でない条件)を考えています. このことは解答後に少し補足したいと思います.
今回, 最初に与えられた\(2\leq a<b<c\leq 6\)の条件から, \((a, b, c)\)の考えられる組は, \(2\)から\(6\)の\(5\)つの整数から\(3\)個の整数を選び出す組の総数だけ考えることができます. 実際, 選び出された\(3\)個の整数に対して, 小さい方から\(a\), \(b\), \(c\)としていけば良いです. よって, \((a, b, c)\)の考えられる組は\({}_5C_3=10\)通りしかないので, (1), (2)は全て列挙して求めることにします.
それでは解いていきましょう.
(1) \((a, b, c)\)の組の総数は, \(2\)から\(6\)の\(5\)つの整数から\(3\)個の整数を選び出す組み合わせの総数\({}_5C_3=10\)通りであり, これらを列挙して確認する.
\(a\) | \(b\) | \(c\) | \(a+b\) | \(a+b>c\) |
---|---|---|---|---|
\(2\) | \(3\) | \(4\) | \(5\) | 満たす |
\(2\) | \(3\) | \(5\) | \(5\) | 満たさない |
\(2\) | \(3\) | \(6\) | \(5\) | 満たさない |
\(2\) | \(4\) | \(5\) | \(6\) | 満たす |
\(2\) | \(4\) | \(6\) | \(6\) | 満たさない |
\(2\) | \(5\) | \(6\) | \(7\) | 満たす |
\(3\) | \(4\) | \(5\) | \(7\) | 満たす |
\(3\) | \(4\) | \(6\) | \(7\) | 満たす |
\(3\) | \(5\) | \(6\) | \(8\) | 満たす |
\(4\) | \(5\) | \(6\) | \(9\) | 満たす |
よってこれから, 条件を満たす\((a, b, c)\)の組は, \((2, 3, 4)\), \((2, 4, 5)\), \((2, 5, 6)\), \((3, 4, 5)\), \((3, 4, 6)\), \((3, 5, 6)\), \((4, 5, 6)\)の7組であることがわかる.
(2) (1)と同様に列挙して確認する.
\(a\) | \(b\) | \(c\) | \(a^2+b^2\) | \(c^2\) | \(a^2+b^2>c^2\) |
---|---|---|---|---|---|
\(2\) | \(3\) | \(4\) | \(13\) | \(16\) | 満たさない |
\(2\) | \(3\) | \(5\) | \(13\) | \(25\) | 満たさない |
\(2\) | \(3\) | \(6\) | \(13\) | \(36\) | 満たさない |
\(2\) | \(4\) | \(5\) | \(20\) | \(25\) | 満たさない |
\(2\) | \(4\) | \(6\) | \(20\) | \(36\) | 満たさない |
\(2\) | \(5\) | \(6\) | \(29\) | \(36\) | 満たさない |
\(3\) | \(4\) | \(5\) | \(25\) | \(25\) | 満たす |
\(3\) | \(4\) | \(6\) | \(25\) | \(36\) | 満たさない |
\(3\) | \(5\) | \(6\) | \(34\) | \(36\) | 満たさない |
\(4\) | \(5\) | \(6\) | \(41\) | \(36\) | 満たす |
よってこれから, 条件を満たす\((a, b, c)\)の組は, \((3, 4, 5)\), \((4, 5, 6)\)の2組であることがわかる.
(3) \((a, b, c)=(3, 4, 5)\)のとき, 余弦定理から
$$
\cos{\angle{\mathrm{ACB}}}=\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}=\frac{3^2+4^2-5^2}{2\cdot 3\cdot 4}=0
$$となり, \((a, b, c)=(4, 5, 6)\)のとき同様に,
$$
\cos{\angle{\mathrm{ACB}}}=\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}=\frac{4^2+5^2-6^2}{2\cdot 4\cdot 5}=\frac{1}{8}
$$となる.
それでは今回の問題の背景の補足をします. まず三角形の成立条件を紹介します.
三角形の成立条件
正の実数\(a\), \(b\), \(c\)を辺の長さとする三角形が存在する必要十分条件は,
$$
a+b>c\,\,かつ\,\,b+c>a\,\,かつ\,\,c+a>b
$$である.
今回の問題では\(a<b<c\)が満たされているので, \(b+c>a\)と\(c+a>b\)は自動で成り立ちます. よって(1)で確認している不等式\(a+b>c\)が満たされれば, 3辺の長さを\(a\), \(b\), \(c\)とする三角形が存在することになります.
次に(2)に関してですが, まず, 正の実数\(a\), \(b\), \(c\)に対して, \(a^2+b^2\geq c^2\)であれば, (1)の不等式\(a+b>c\)が成り立つことが,
$$
(a+b)^2=a^2+2ab+b^2>a^2+b^2\geq c^2
$$から簡単にわかります. その上で, 辺の長さが\(a\), \(b\), \(c\)である三角形が, \(a^2+b^2\geq c^2\)を満たすのは, 三角形が直角三角形, または鋭角三角形のときに限ります. なぜなら, \(a<b<c\)より, 三角形\(\mathrm{ABC}\)の最大角は\(\angle{\mathrm{C}}\)になります(これは正弦定理からわかる有名事実です). 余弦定理から
$$
\cos{\mathrm{C}}=\frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}
$$であり, \(0<a<b<c\)を前提として,
$$
a^2+b^2-c^2\geq 0 \iff \cos{\mathrm{C}}\geq 0 \iff 0< \mathrm{C}\leq \frac{\pi}{2}\,\,(0^\circ < \mathrm{C} \leq 90^\circ)
$$となるからです.
補足ですが, \(a<b<c\)を前提としないと上の同値関係は崩れます. 例えば, \(a=5\), \(b=3\), \(c=2\)とすると, \(\cos{\mathrm{C}}=1\)となり, \(C=0\)となってしまいます.
以上から, (1)の不等式は三角形の成立条件, (2)の不等式はその三角形が直角三角形, もしくは鋭角三角形になる条件を考えていたことがわかりました.
youtubeでも解説しています.