今回はこちらの問題を解いていきます.
自然数\(x, y, z\)を用いて\(N=9z^2=x^6+y^4\)の形で表すことのできる自然数\(N\)の最小値を求めよ.
(2025 京都大学理系[2])
整数問題は「余りに注目する」ことで条件が絞られ解きやすくなることがあります. 今回の問題はその典型です. 問題に出てくる\(9z^2\)が\(3\)の倍数である事から\(3\)で割った余りに注目します.
それでは解いていきましょう.
まず最初に, 3の倍数でない整数の二乗は\(3\)で割ると\(1\)余る整数になることを示す.
整数\(n\)が\(3\)で割って\(1\)余るとき, \(n\)は整数\(k\)を使って\(n=3k+1\)と表せるから,
$$
n^2=(3k+1)^2=3(3k^2+2k)+1
$$となる. よって, \(n^2\)を\(3\)で割った余りは\(1\)である.
整数\(m\)が\(3\)で割って\(2\)余るとき, \(m\)は整数\(l\)を使って\(m=3l+2\)と表せるから,
$$
m^2=(3l+2)^2=3(3l^2+4l+1)+1
$$より, \(m^2\)を\(3\)で割った余りは\(1\)である.
以上から\(3\)の倍数でない整数の二乗は, \(3\)で割って\(1\)余る整数となることが示された.
次にこれを用いて題意を満たす自然数\(x\), \(y\)は共に\(3\)の倍数であることを示す.
\(x\), \(y\)が共に\(3\)の倍数でないとすると, \(x^3\), \(y^2\)も\(3\)の倍数でないから, 先に示した事実から, \(x^6=(x^3)^2\), \(y^4=(y^2)^2\)はいずれも\(3\)で割ると\(1\)余る整数である. よってその和\(x^6+y^4\)は\(3\)で割って\(2\)余る自然数となり, これが\(3\)の倍数である\(9z^2\)に等しいことに矛盾する.
また\(x\), \(y\)のいずれか一方が\(3\)の倍数で, 他方が\(3\)の倍数でない時も同様に\(x^6+y^4\)は\(3\)で割って\(1\)余る自然数となりこれもまた矛盾する.
よって, 題意を満たすような自然数\(N\)が存在するのであれば, \(x\), \(y\)はいずれも\(3\)の倍数である必要がある.
これから, \(x\), \(y\)に対して, 自然数\(x^\prime\), \(y^\prime\)が存在して, \(x=3x^\prime\), \(y=3y^\prime\)とかける. これを, \(9z^2=x^6+y^4\)に代入すると,
$$
\begin{align}
&9z^2=(3x^\prime)^6+(3y^\prime)^4\\[1.5ex]
\iff & z^2=3^4{x^\prime}^6+3^2{y^\prime}^4
\end{align}
$$となる. 右辺は\(3\)の倍数だから, \(z^2\)も\(3\)の倍数であり, よってまた, \(z\)も\(3\)の倍数である. これから, \(z\)に対して, 自然数\(z^\prime\)が存在して, \(z=3z^\prime\)と表せる. 上式にこれを代入すると,
$$
\begin{align}
&(3z^\prime)^2=3^4{x^\prime}^6+3^2{y^\prime}^4\\[1.5ex]
\iff & {z^\prime}^2=3^2{x^\prime}^6+{y^\prime}^4
\end{align}
$$となり, さらに\({y^\prime}^4\)を移項し, 因数分解すると,
$$
\begin{align}
\iff & {z^\prime}^2-{y^\prime}^4=3^2{x^\prime}^6\\[1.5ex]
\iff & (z^\prime + {y^\prime}^2)(z^\prime – {y^\prime}^2)=3^2{x^\prime}^6
\end{align}
$$が得られる. \(y^\prime\), \(z^\prime\)は自然数であるから, \(z^\prime + {y^\prime}^2>0\)なので, \(z^\prime – {y^\prime}^2>0\)である必要がある. さらに, \(z^\prime + {y^\prime}^2>z^\prime – {y^\prime}^2\)であることにも注意する.
まず\(x^\prime=1\)として, この関係式を満たす\((x^\prime(=1), y^\prime, z^\prime)\)を求める. \(x^\prime=1\)より, 関係式は
$$
(z^\prime + {y^\prime}^2)(z^\prime – {y^\prime}^2)=9
$$となり, 先の条件よりこの関係式を満たすような \(y^\prime\), \(z^\prime\)は,
$$
\begin{align}
z^\prime + {y^\prime}^2&=9\\[1.5ex]
z^\prime – {y^\prime}^2&=1
\end{align}
$$となる必要がある. 2辺を足すと, \(2z^\prime=10\)となり, \(z^\prime=5\)がわかる. さらに\(y^\prime=2\)はこの2式のどちらも満たすことがわかるので, \(x^\prime=1\)のとき, \(y^\prime =2\), \(z^\prime =5\)と一意に定まる. このとき, \((x, y, z)=(3, 6, 15)\)であり,
$$
N=9\cdot 15^2=3^6+6^4=2025
$$ である. つぎに, \(x^\prime\geq 2\), つまり\(x\geq 6\)のとき, \(N=9z^2=x^6+y^4\)を満たす自然数の組\((x, y, z)\)が存在したとすると,
$$
N=x^6+y^4\geq x^6\geq 6^6=46656
$$となり, \(N\)は先に求めた\(2025\)よりも大きくなることがわかる. よって, \(N=9z^2=x^6+y^4\)を満たす最小の自然数\(N\)は\(2025\)である.
整数問題では最初に紹介した「余りに注目する」の他に「積の形で表す」という定石もあります. 以下こちらに関してコメントします.
今回途中で, \({z^\prime}^2=3^2{x^\prime}^6+{y^\prime}^4\)を変形し, 以下のように積の形で表しました.
$$
(z^\prime + {y^\prime}^2)(z^\prime – {y^\prime}^2)=3^2{x^\prime}^6
$$
積の形に直さなくても, 変形前の式で\((x^\prime, y^\prime)=(1, 1)\), \((x^\prime, y^\prime)=(1, 2)\), \((x^\prime, y^\prime)=(2, 1)\)のように代入をしていって, \(3^2{x^\prime}^6+{y^\prime}^4\)が平方数になる組み合わせを探しも良いです.
しかし, 今回の問題ではたまたま\(x^\prime=1\)で関係式を満たす\(y^\prime\), \(z^\prime\)が見つかりましたが, 他の問題では簡単に見つからない場合も当然あります. よって今回の解法のように積の形で表して, 条件を絞って探す方が効率的な場合が多く, 今回はこの解法を採用しました.
「余りに注目する」, 「積の形で表す」どちらも習得必須の解法パターンとして覚えておいてください.
ちなみにこちらは2025年に京都大学入試で出題されており, \(N=2025\)が最小という, とてもおしゃれな問題になっております.
youtubeでも解説しています.