今回はこちらの問題を解いていきます.
正の整数\(n\)を考える. 1枚のコインを投げ, 表が出たら\(1\)、裏が出たら\(2\)と記録する. この試行を\(n\)回繰り返し, 記録した数字を出た順に左から並べて10進法で\(n\)桁の数\(X\)を作る. このとき, 数\(X\) が 6で割り切れる確率を求めよ.
(2025 京都大学 文系 [3])
それでは解いていきましょう.
\(n\)以下の正の整数\(k\)に対して, \(k\)回目に記録する数を\(x_k\)とし, \(X_k\)をコインを\(k\)回投げ終わった時点で記録されている数とする. つまり,
$$
X_k=x_1 {10}^{k-1}+{x_2}{10}^{k-2}+\cdots +x_{k-1}{10}^1 + x_k
$$である. このとき, \(X=X_n\)であることに注意する.
次に一般に, \(0\)以上の整数\(l\)に対して
$$
{10}^l \equiv 1 \pmod 3
$$となるので, $$
\begin{align}
X_k&=x_1 10^{k-1}+x_2 {10}^{k-2}+\cdots +x_{k-1} 10^1 + x_k\\[1.5ex]
& \equiv x_1+x_2+\cdots+x_{k-1}+x_k \pmod 3
\end{align}
$$となり, \(X_k\)を\(3\)で割った余りと, \(X_k\)の各桁を足したものを\(3\)で割った余りは一致する.
以下, \(n\geq 2\)とする.
\(X_n(=X)\)が\(3\)の倍数になるのは, 「\(X_{n-1}\)が\(3\)で割って\(1\)余り, かつ, \(x_n=2\)」の場合と,「\(X_{n-1}\)が\(3\)で割って\(2\)余り, かつ, \(x_n=1\)」のいずれかのときであるが, \(X_n\)が\(6\)の倍数にもなるのは, 前者のときに限る. つまり,
$$
「X_nが6で割り切れる」 \iff 「X_{n-1}が3で割って1余る」\,\,\,かつ\,\,\, 「x_n=2」
$$が成り立つ.
ここで, \(X_k\)が\(3\)で割って\(0\)余る確率を\(p_k\), \(1\)余る確率を\(q_k\), \(2\)余る確率を\(r_k\)とする. 「\(X_{n-1}\)が\(3\)で割って\(1\)余る」と「\(x_n=2\)」は独立なので, 求める確率は各々の確率をかけて,
$$
q_{n-1}\times\frac{1}{2}
$$となる. つまり, \(q_{n-1}\)を求めれば良い.
\(p_k\), \(q_k\), \(r_k\)に関して, \(k=1,2,\cdots n-1\)のとき, 以下の漸化式が成り立つ.
$$
\begin{align}
p_{k+1}&=\frac{1}{2}q_k+\frac{1}{2}r_k\\[1.5ex]
q_{k+1}&=\frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2}r_k\\[1.5ex]
r_{k+1}&=\frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2}q_k\\
\end{align}
$$ ここで, \(p_k+r_k=1-q_k\)であることに注意すると, 第2式は,
$$
q_{k+1}=\frac{1}{2}(p_k+r_k)=\frac{1}{2}(1-q_k)
$$とかける. これから,
$$
q_{k+1}-\frac{1}{3}=-\frac{1}{2}\left(q_k-\frac{1}{3}\right)
$$となり, 数列\(\displaystyle \left\{q_k-\frac{1}{3}\right\}\)は初項\(\displaystyle q_1-\frac{1}{3}\), 公比\(\displaystyle -\frac{1}{2}\)の等比数列になることがわかる. \(X_1\)が\(3\)で割って\(1\)余るのは, \(x_1=1\)となるときなので, \(\displaystyle q_1=\frac{1}{2}\)である. よって,
$$
\begin{align}
q_k-\frac{1}{3}&=\left(-\frac{1}{2}\right)^{k-1}\left(q_1-\frac{1}{3}\right)=\frac{1}{6}\left(-\frac{1}{2}\right)^{k-1}\\[1.5ex]
\iff q_k&=\frac{1}{3}+\frac{1}{6}\left(-\frac{1}{2}\right)^{k-1}=\frac{1}{3}\left\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^k\right\}
\end{align}
$$となる.
よって, \(k=n-1\)として,$$
q_{n-1}=\frac{1}{3}\left\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\right\}
$$となるから, \(n\geq 2\)のとき, 求める確率は,
$$
\frac{1}{2}q_{n-1}=\frac{1}{6}\left\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\right\}
$$となる.
また, \(X_1\)は\(1\)または\(2\)のいずれかであり, \(X_1\)が\(6\)で割り切れる確率は\(0\)である. よって, 上の式は\(n=1\)でも成り立つから, 求める確率は,
$$
\frac{1}{6}\left\{1-\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\right\}
$$となる.
youtubeでも解説しています.